Bayes' theorem

nakaoshi_kaos2011-10-02

今夜何気なく平成教育委員会を見ていたら、下記のような数学の問題が出題された。


「たけしさんには、2人の子供が居ます。少なくとも1人が男の子であることを教えて貰った場合、もう1人の子供が女の子である確率は?」


というもの。


直感的に、1人の性別を教えて貰ったところで、もう1人の子供の性別を絞り込む情報は含まれていないので、「1/2」だろうと思ったら、「2/3」が正解だった。


……果たして本当か?


番組の解説は、これは「条件付き確率」の問題であり、(男、男)、(男、女)、(女、男)、(女、女)という兄弟姉妹が均等に存在するとして、「少なくとも1人が男の子である」ということが分かったことによって、(男、男)、(男、女)、(女、男)の3通りに絞り込まれ、女の子が含まれているケースは(男、女)、(女、男)の2通りなので、「2/3」というもの。


この解説を聞いたとき、強烈な違和感を覚えた。


違和感の元は、(男、男)の組み合わせが、(男、女)、(女、男)と対等に扱われているということ。


そして、「1人が男の子である」ことを教えて貰っただけで、「もう1人が女の子である確率」が「2/3」になるなんて、虫が良過ぎると言うこと。仮に「1人が女の子」であると教えて貰っていたら、「もう1人が男の子である確率」が「2/3」になるとでもいうのだろうか?


この問題を分かり易く理解するために、n数を増やし、一般化して考えてみる。


1000組の兄弟姉妹が居た場合、男女の組み合わせは、


・(男、男):250組
・(男、女):250組
・(女、男):250組
・(女、女):250組


である。この内、1人の性別を明らかにする場合の組み合わせは、


・(男、男)&1人が男の子であることを教える:250組(←2人とも男の子なので、選択の余地なし)
・(男、女)&1人が男の子であることを教える:125組
・(男、女)&1人が女の子であることを教える:125組
・(女、男)&1人が女の子であることを教える:125組
・(女、男)&1人が男の子であることを教える:125組
・(女、女)&1人が女の子であることを教える:250組(←2人とも女の子なので、選択の余地なし)


となる。ここで一番上の問題に戻ってみると、聞き手が把握している情報は、「1人が男の子である」ということだけなので、上記の内、


・(男、男)&1人が男の子であることを教える:250組
・(男、女)&1人が男の子であることを教える:125組
・(女、男)&1人が男の子であることを教える:125組



の3通りのケース(合計500組)に絞られる。この内、もう1人が女の子である組み合わせは、


・(男、女)&1人が男の子であることを教える:125組
・(女、男)&1人が男の子であることを教える:125組


の250組なので、250/500=「1/2」となる。つまり番組の「2/3」の考え方は誤りで、「1/2」が正しいということになる。


この問題の肝は、「1人が男の子であること」を教えるか、「1人が女の子であること」を教えるか、自由に選択できるかどうかどうかにある。


上記の通り、(男、女)、(女、男)の家族が、教える性別を自由に選択できる場合は、正解は「1/2」となる。


しかしながら、何らかの制約により、(男、女)、(女、男)の家族に選択の余地がない場合は、「1/2」とはならない。例えば、聞き手が先に「少なくとも1人は男の子ですか?」と聞いたとして、「はい、男の子です」という回答が返ってきた場合の正解は「2/3」となる。


これは、自分から性別を教える場合は、結局のところ、ある1人の性別にしか触れておらず、もう1人の性別には何ら情報を与えていないことになるが、性別を聞かれて答える場合は、質問の内容と2人の性別を照らし合わせて回答することになるからである。


つまり、1人分の情報しか与えていない前者は「1/2」であり、2人分の情報を与えている後者は「1/2」を上回る確率となるのである。


この例を先程の1000組を用いて説明すると、


・(男、男):250組
・(男、女):250組
・(女、男):250組
・(女、女):250組


の内、


・(男、男):250組
・(男、女):250組
・(女、男):250組


の合計750組が「少なくとも1人は男の子です」と答える。つまり、もう1人が女の子である組み合わせは500組あるから、500/750= 「2/3」となる。


番組の問題を聞き逃した可能性もあるので、「2/3」が正解となる表現が含まれていたのかも知れないが、別にこの記事で番組の解答を否定したい訳ではなく、問題文を少しアレンジするだけで、正解が全く別物に変化するという点が面白い、ということを単に伝えたかった。


この手の問題に興味がある人は「ベイズの定理」とか、「モンティ・ホール問題」を調べてみるといい。